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1772:戦犯裁判:中華民国管轄・広東裁判:第48号法廷/郷民殺害留置人虐待事件
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    戦犯裁判中華民国管轄広東裁判
     

    第48号法廷/郷民殺害留置人虐待事件


    起訴理由概要:昭和17年3月香港新界地区憲兵隊長として大浦憲兵分所に於いて郷民鄭等5名を殺害し、香港憲兵隊留置所に於ける管理責任者とし、拘置せられた者に対する非人道的取り扱いの責任。
    下地は本部特眸桧として服務中、沙包憲兵分所に於いて、警備隊より送致された間諜陽を虐待せり。

    23軍憲兵隊・市川正憲兵大尉・静岡・42歳:47/5/31判決死刑>47/8/28確認
    ・下地恵修憲兵曹長・沖縄:47/5/31判決15年>47/8/23確認

     

     

    死刑執行の日
    昭和22年8月28日今日、余42年の生涯を閉づる日である。顧みれば戦敗れ囚われてより2年に亙る中国の桎梏より完全に解放せられ、霊魂の自由の天地に還る事を得るは真に感喜に堪えざる所なり。惟ふに中国は徳を以て国是となし三民主義を以て理想となし蒋介石は日本軍民に対し報復せずと宣言せるも之等何れも真赤な嘘である。現に広東に於ける戦犯審判の実情は明らかに血に対しては血を以て報ゆる。この思想を一歩も出ず徹底的な報復裁判に終始し、遂に戦犯大屠殺の暴を敢へてしてゐるのである。嗚呼斯くして亜細亜に於ける日支両国民族の提携はいつの日であるであらうか。永遠に断じてあり得ない。只血の対立あるのみ。然らばこの責任は日支何れが負ふべきか。勿論中国の負ふべき当然の帰結であり、日本は武器を投じて中国に降ったのである。中国自ら死屍に鞭打ち窮鳥を射、以て中日提携を大きく拒んで居るのである。余等は万斛の涙をのんで護国の鬼と化すのである。必ずや余等の悲願は余等の子孫、戦友後輩同胞に依って継承され凝って七生報国の精神となり中国に報ゆる秋が来るべく亦それを堅く祈念し白雲山下刑場に赴くものなり。愛児の写真と愛児よりの便りの葉書をしかと胸に収めて。

    看守に誘導せられ或一室で携帯品検査受けた。二三の薬品と中国語の辞書を没収せられ寝具被服は大体に検査も通ってそれを担って監房の前に行くと、他の看守が出て来て入監通知書を読んで中に入ったと思ったら物凄く大きな鉄槌と鉄の足枷を持って再びやって来てコンクリートの通路の上に余の腰を下させ両足を投出させ足枷をはめカツンカツンと鉄槌を力委せに打つ。万一打ち損じて向ふ脛でもぶったら向ふ脛がたたき折られはせんかとはらはらしたが馴れたもの打ち損じもなかった。さすがこの足枷を打たれたのにはいささか辟易させられた。死刑の判決も笑って受けはしたがこれから死ぬ迄両足を縛りつけてしまふのかと思ふと暗澹たる気がした。何しろ相手が支那さんの事だから如何とも致し様がない。これが戦勝国?文明法治国?世界何れの国に於て今日斯る非文明的な十八世紀の遺物足枷を用ひる国があるだらうか。余等は何と籤運の悪い星の下に生まれたものか。香港で戦犯になってゐたらまさか英国さん、こんな足枷を用ひはしないだらうと今にして悔まれる事おびただしいが、然し現実は死刑囚と無期徒刑者は一律にこの桎梏を甘んじなければならない。これが現実の戦犯の姿なのであるから何と云っても仕方がない。

    水は一人一日約1リットル、それを朝の洗面夕方身体を拭くのみ。運動は一日一回約十五分間。監房の横の約二十坪ばかりの空地に出てくるくると廻り、型ばかりの体操をさして呉れる。その間丈僅かに太陽をまぶしく浴びる。それが一日中の最も楽しい行事である。食事は一日二食。朝食十一時夕食四時、定量は一日米二十五両(両は十匁)と云うが実際は二十両に尚足らず、副食が之亦少量の野菜を油でいため調理も味も十年一日の如し。カロリーの計算も栄養学的見地もそんなものは凡そあったものではない。

    凡そ中国の監獄にもやはり文字の国だけあって監獄規定と云ふ様なものは形式的には頗る完備してゐるらしいがその実際の運用に至っては全然行はれてゐない。所謂監獄と云ふ処は苦しめる処であると云ふ観念から一歩も出ていない。戦犯も軍事犯も政治犯も懲治犯と一把一束待遇取扱上何等差異なし。

    凡そ中国人からピンハネ(頭をはねること)悪習を除かん限り一切の規定も設備も総て有名無実になってしまふ。これは驚くべき事であると同時に亦公然たる事実である。亦中国の留置場監獄は金さへ有れば何でも出来るし何でも買へれば何でも食へる。御多分に漏れずこの監房でも在監者の私金で何でも買ふ事が出来る。食物でもお菜でも湯でも金である。金のある奴は湯桶を買って行水も出来る。馬鹿げた処だ。地獄の沙汰も金次第と云ふ言葉は実際支那位適切に通用する処はないだらう。副食不足は監獄当局自ら認めて居り、一週一度在監者の私金にて副食購入の斡旋をして呉れる。勿論之等購入物品のピンハネは係官の重要な役得で市価の倍額に近い価格である。寝具被服日用品全部自分持ちである。

    幸い余等は若干の金を準備し亦残留邦人戦友よりの非常の費用日用品代の月々差入れを受けられるるを以って僅かに獄中生活を維持しあるも、果たして同胞全部帰国後の在監者の今後の生活はどうなるであらうか正に暗澹たるものあり。在監者等しく平和会議の一日も速やかに締結を見、戦犯者の日本内地服役に唯一の希望を繋ぎ日々を闘ひとって居る状態亦哀れと云はんか。ああ、暑い、水水。
    スコールや破れ樋を雨水の奔流す
    西日さす鉄窓一杯の暑さかな


    <遺 詠>

    そのかみのもののふの如く我もまた
    死の宣告を微笑みて受く

    夜半にさめふと寝かへれば足枷の
    鎖の音に我と驚く

    今にして只におもへば吾が妹に
    優しき言葉与へざりきを

    一すじに吾を頼りに生きし妹の
    死刑のしらせ何ときくらん

    【2014.09.07 Sunday 06:08】 author :
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      【2019.04.06 Saturday 06:08】 author : スポンサードリンク
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